試合前、緊張で固まってしまう…

読者:
試合直前になると体がこわばって、本来の力が出せません。ウォームアップって、緊張にも効きますか?

ハタケ:
効きます。ポイントは①神経を起こす(キレを出す)と②気分を整える(不安を落ち着かせる)の二本立てにすること。体が動くと、心もついてきます。
まずは答え:ウォームアップは「心」にも効く
最新研究では、ストレッチ中心より“神経筋トレ(NMT)”を含むウォームアップのほうが、自信や不安のコントロールに良い影響を与えた報告があります。また、好きな音楽を使うと気分・活力・自己効力感が上がりやすいという研究も蓄積しています(出典は末尾)。
90秒スイッチオン(会場で即使える)
- 0–30秒|神経起こし:その場ジャンプ×10 → 15m軽ダッシュ×1 → サイドステップ×10。“反応の速さ”に点火。
- 30–60秒|可動×安定:ヒップオープナー左右×5 → 肩回し大×5 → 体幹タップ左右×10。可動域と軸の両立。
- 60–90秒|心の整え:イヤホンで好きな曲のサビ15〜20秒を聞きながらリズム歩き → 最後に次の一歩を心の中で宣言(例「最初は安全パス」「S+1はクロス」)。
3つのテンプレ(気分が上がる/落ち着くを両立)
- A|NMTライト型(やる気スイッチ):軽ジャンプ→スキップ→加速ダッシュ→方向転換。筋出力と反応をまとめて起こす。
- B|音楽ドライブ型(活力ブースト):BPMやや高めの曲で、リズムに合わせてスキップ・シャッフル・モビリティ。音でテンポを作る。
- C|静動ミックス型(心拍コントロール):〈動き20秒〉→〈吐く長め10秒〉を3サイクル。上がりすぎを抑えて安定へ。
競技別ワンフレーズ(迷いを消す“合図”)
サッカー:「最初の守備は内切り」「ライン寄せ」/テニス:「トス高め80%」「面で運ぶ」/陸上:「前傾角度・腕ふり」。
言葉を短く具体に。考えるより“合図→動く”。
NGになりやすいこと(サクッと回避)
- 静的ストレッチだけを長時間:競技直前はパワーが落ちる可能性。必要なら短め+動的と組み合わせる。
- 歌詞に引きずられる選曲:気が散るなら歌詞少なめ・ビート重視に。試合ごとに1曲だけ“勝ち曲”を固定するのも手。
- 手順が毎回バラバラ:同じ型にすると脳が「もう準備OK」と学習しやすい(=ルーティン効果)。
もし緊張が強すぎるなら(If–Then)
もし手が冷たいほど緊張したなら「ジャンプ10→吐く10秒→一言キュー」。
もし視線が泳ぐなら「一点注視1秒→次の一歩を宣言」。
もし頭が真っ白なら「メモの最初の一文だけ声に出す」。
30秒ショート(集合前にこっそり)
- つま先トントン×20 → 肩回し×5。
- サイドステップ×10 → その場でフーと長く吐く。
- 「最初は安全に/S+1はクロス」など次の一歩を心で宣言。
参考文献(クリック可)
- ウォームアップでのNMTが自信・不安に好影響:Hammami A, et al., 2025, PLoS ONE(サッカー選手) PubMed / PMC全文
- 音楽とウォームアップ:気分・自己効力感・パフォーマンスの向上 — Aloui A, 2015(ウォームアップ中の音楽で不安低下・自信↑)PMC/ Jarraya M, 2012(音楽で短時間高強度の出力↑)PMC/ Ballmann CG, 2021(レビュー)PMC/ Delleli S, 2023(プレタスク音楽で心理反応改善)PMC
- ウォームアップ総説(RAMPなどの考え方の整理):Afonso J, 2023 PMC
- 最新:RAMPが瞬発系に有利(ユースサッカー):Girginer FG, 2025 Frontiers
- メンタル・ウォームアップの受容性:Brewer BW, 2019 Journal
※本記事は一般情報です。体調やけがの不安がある場合は指導者・医療専門職にご相談ください。
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