本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

イヤイヤ期にイライラ…手を出しそうな自分が怖いママへ。感情を整える4つの工夫

【専門家対話コラム】イヤイヤ期にイライラ…手が出そうで怖いときの〈脳リセット〉

その不安は、とても自然です。イライラは性格ではなく「脳の疲れ」のサイン。まずは安全を最優先に、次に脳を落ち着かせる小ワザを。ここでは中学生にも読める形で、科学の根拠とともにまとめます。

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読者:2歳の「イヤ!」が続いて、カッとなる自分が怖い…。どうしたら止められますか?
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ハタケ:まずは自分を責めないで。危険を察知する扁桃体が過敏、ブレーキ役の前頭前野が疲れているだけ。数十秒の工夫で立て直せます。
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クロ先生:合言葉は「安全→小休止→再開」。やることはシンプルでOKです。

なぜ効く?(しくみ)

強いストレスでは扁桃体が反応しやすくなり、司令塔の前頭前野の働きが下がります。そこで役立つのが感情のラベリング(「いま怒り8/10」などと一語で表す)。言葉にするだけで扁桃体の反応が弱まり、前頭前野が働きやすくなる示唆があります。

さらに、数十秒〜数分のマイクロブレイク(短い休憩)は、疲労の軽減や活力の回復に小〜中等度の効果が報告されています。衝動の波は長く続きません。波が過ぎるまで「安全に待つ」ことがポイントです。

最近の報告では、前頭前野の調整が弱いと怒りが衝動行動に結びつきやすいこと、そして「自分はいまこう感じている」と認める姿勢が自制を助ける可能性が示されています(人への当てはめは慎重に)。

今日からできる手順(4つの工夫)

  1. 安全を先に確保(10〜30秒):子をベビーベッドやサークルに置く/危ない物を遠ざける。窓や玄関の鍵も確認。ここまででOK。
  2. ひと言で気持ちを言う(30秒):小声で「怒り8/10」「疲れ」「焦り」。評価や反省は後回し。メモでも良い。
  3. 冷やして切り替える(15〜60秒):冷水で手首を流す/保冷剤やペットボトルを握る。皮膚が弱い人はタオル越しに。
  4. 3秒アイブレイク+長い呼気:目を閉じる→ゆっくり吐く(5–6秒)。できれば1〜2分の小休止。戻ったら「選択肢2つ」で声かけ(例:「靴は自分?ママと一緒?」)。
コツ:(1)その場の説教はしない。(2)夜に重大決定をしない「夜ルール」。(3)うまくいかない日も普通。手順を固定して“準備運動”にしましょう。

ミニケース

Before:お風呂イヤで大泣き。抱っこ中にカッとなり、手が出そうに。
After:子を安全な場所へ→「怒り7/10」とラベリング→保冷剤をタオル越しに30秒→目を閉じて長く吐く→「頭から?足から?」の二択で再開。3分で入浴スタート、翌日も同じ手順で再現できた。

よくある質問(FAQ)

Q. 本当にその場を離れていいの?
A. 子の安全を確保してからならOK。ベビーベッドやサークルの中で待ってもらい、あなたは数十秒だけ離れて整えましょう。

Q. 「冷やす」はどのくらい?
A. 15〜30秒を目安に。直接の冷やし過ぎや皮膚トラブルには注意。苦手なら手洗い・窓を開けるで代用。

Q. それでも衝動が強いときは?
A. まず安全。くり返す場合は早めに専門家へ相談を。(お住まいの自治体の子育て相談や医療機関へ)

参考文献(PubMed)

  • Lieberman MD, et al.(2007)Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity. Psychological Science. PMID: 17576282 PubMed
  • Albulescu P, et al.(2022)Micro-breaks and well-being: systematic review & meta-analysis. PLOS ONE. PMID: 36044424 PubMed
  • Xie X, et al.(2025)Prefrontal regulatory deficits and impulsive aggression. (Journal info). PMID: 40037660 PubMed
  • Du J, et al.(2025)Acknowledge emotions and self-control: evidence from human studies. (Journal info). PMID: 40069634 PubMed

※本記事は一般情報です。具体的な診断・治療・緊急対応は、必ず専門家にご相談ください。

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