本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

チームメイトにイライラしてしまう|感情を整えパフォーマンスを高める3つのヒント

チームメイトにイライラ…どう扱えば、雰囲気も結果も良くなる?【根拠つき】

チームで長く過ごしていると、イライラは誰にでも起きる自然な感情です。ポイントは「抑え込む」でも「ぶつける」でもなく、うまく“扱う”こと。ここでは、感情を整えながらパフォーマンスと信頼関係を両立させる実践法を、医学・心理学の知見とともに解説します。

ハタケ
ハタケ:

感情を「無かったこと」にすると、後で反動が来ます。言葉・呼吸・場づくりの3点セットで、冷静に共有できる土台を作りましょう。

まず押さえたい:イライラは“サイン”

  • 価値観・役割・期待のズレを知らせる注意信号
  • 放置すると集中低下・ミス増加・雰囲気悪化に波及
  • うまく扱えば、改善点の共有 → チームの成長に変わる

根拠で選ぶ:実践4ステップ

① まずは体を落ち着かせる(60〜90秒)

ゆっくり息を吐く「スローブリージング」は、自律神経を整え、緊張・怒りの高ぶりを鎮めます。レビューや実験研究でも、ゆっくりした呼吸が情動調整に役立つことが示されています。 Boyadzhieva, 2021(総説, PMC)You, 2021(実験, PMC)

  • やり方:「4秒吸う → 6〜8秒かけて吐く」を1分。吐く時間を長めに。
  • コツ:肩ではなくお腹が静かに動く程度でOK。

② 「今の気持ち」を短く言語化する(セルフ実況)

紙に一言で書き出す/小声でつぶやく——いわゆる感情のラベリングや筆記表現は、ストレス反応の軽減に役立つことが報告されています。受験生を対象とした筆記介入の無作為化試験では、心理的苦痛の改善が認められました( Marković et al., 2020, PubMed)。

  • 書き方例:「今、○○の場面でイライラが8/10」「理由:役割のズレ」
  • 数字(0〜10)で強さをつけると、客観視しやすくなります。

③ 攻めずに伝える:「Iメッセージ」+具体

相手を主語にせず、自分の気持ち → 影響 → 望む行動の順で短く伝えると、防衛的反応を減らせます。非暴力コミュニケーション(NVC)等のトレーニングでは、共感スキルの改善が確認されています( Rees et al., 2021, PubMed)。

NG:あなたが遅いから、みんな困ってる」
OK:私は開始に間に合わないと焦る。今日だけアップを5分前倒しできる?」

④ 発散で終わらせない:「短い振り返り」を仕組みに

感情が爆発する前に、予定に組み込む“感情の棚卸しミーティング”が有効です。医療現場のパイロット研究ですが、短時間のクリニカル・デブリーフィングがチームの学習・連携に良い手応えを示しました。スポーツでも「短い振り返り」を定例化する意義は同様です( Kow et al., 2024, PMC)。

  • 型(10分):①事実 → ②良かった1つ → ③改善1つ → ④次回の約束(担当・期限)

現場でそのまま使えるミニ台本(30秒)

  1. 呼吸2サイクル: 4秒吸う → 8秒吐く ×2
  2. 実況:「今、イライラ7/10。理由は連携ミス」
  3. 一言提案:「私、開始合図がないと焦る。次は『合図→パス』で合わせたい」
クロ先生
クロ先生の1分ワーク:

「週1・3行レポート」——(1)今週イライラした場面(事実)/(2)気持ち(0〜10)/(3)次の具体案(1つ)。3週分を見返すと、原因のパターン(役割・時間・言葉)が見えてきます。

さらに一歩:心理スキルは“チームの結果”にも効く

メンタル介入(呼吸・認知・コミュニケーションなど)を含む心理的トレーニングは、アスリートのパフォーマンス向上に効果があるとするメタ分析が報告されています( Reinebo et al., 2024, PubMed)。つまり、感情を整えるスキルは「気分のため」だけでなく、勝つための基礎体力でもあります。


参考文献(PubMed / PMC)

  • Reinebo G, et al. Effects of Psychological Interventions to Enhance Athletic Performance. PubMed
  • Boyadzhieva A, et al. Keeping the Breath in Mind: Respiration, Neural, Cognitive and Emotional Dynamics. PMC
  • You M, et al. Slow-Paced Breathing Exercise. PMC
  • Marković T, et al. Expressive writing intervention for test anxiety. PubMed
  • Rees A, et al. Nonviolent Communication training improves empathy. PubMed
  • Kow CS, et al. Clinical debriefs reinforce positive feedback climates. PMC

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