人前で話すと声が震える――原因と対策をまとめて解説
読者からの質問

読者:
人前で話すと、声が震えてしまいます。心臓もバクバクして、頭が真っ白に…。これって気合いの問題?それとも身体が何かおかしいんでしょうか?
それは「気合い不足」ではなく、生理的な反応です

ハタケ:
体は「注目=危険かも」と誤解すると、交感神経(警戒モード)が優位になり、心拍上昇・発汗・手の震えが出ます。声は声帯まわりの筋肉が硬くなると震えやすく、呼吸が浅いとさらに不安定になります。つまり「弱さ」ではなく、体の仕組みです。
ポイント(30秒で理解)
- 強い緊張=扁桃体(警報)が優位 → 前頭前野(司令塔)が働きにくい → 言葉や手順が飛ぶ。
- 心と体はつながっています。心拍変動(HRV)と不安の経過は関係があるという報告もあります(Fagioli 2025)。
身体反応を「見える化」すると、落ち着きやすい

クロ先生:
近年は、VR(仮想会場)+バイオフィードバックで心拍や呼吸を可視化して練習し、緊張の軽減に役立てる研究もあります(Premkumar 2024)。
ただ、特別な機器がなくても大丈夫。呼吸・声のウォームアップ・視線の使い方を整えるだけで、多くの人は“震えにくい状態”へ戻せます。
今すぐできる:声の震えを抑える4ステップ
- 吐く長め呼吸(60秒):4秒吸う → 6〜8秒吐くを5回。口をすぼめて細く長く。心拍が落ち着き、声帯への力みが抜けやすくなります。
- 声のウォームアップ(60秒):ハミング(んー)→リップトリル(ブルル)→軽い母音(あ・え)。喉を締めず、口角と頬をゆるめるのがコツ。
- 一点注視+最初の一文(20秒):会場の一点を1秒見て、最初の一文だけ低め&ゆっくりで読み出す。出だしの安定=その後の安定。
- 手の震え対策(20秒):握って3秒→離して5秒×3セット。細かい震えのループを断ちます。
※「ボックス呼吸(4-4-4-4)」は鎮静が強め。直前に眠くなる人は、止息なしの4→6〜8に切り替えを。
本番直前90秒ルーティン(道具いらず)
- 姿勢:足裏フラット、鎖骨を軽く開く。
- 呼吸:4→6〜8を5回(吐きを長く)。
- 声準備:ハミング10秒→リップトリル10秒。
- 視線と合図:スライド左上の角を1秒→「次の一文」と心で宣言。
よくあるつまずき → その場で直すコツ
- 声が震え続ける:吐く長め×2→最初の一文をもう一度ゆっくり→1拍の間。沈黙は失敗ではなく“間”。
- 頭が真っ白:手元のカードの見出し3行だけ読む→戻る。完璧より再起動。
- 目が泳ぐ:左→中央→右と会場をなぞる固定ルートを決めておく。
- 早口になる:語頭を低めに・句点で1拍。スピードより区切り。
一言フレーズ(セルフトーク):「ゆっくり・低め・次の一文」。迷ったら、この一言に戻る。
段階的に慣らす:3ステップ練習(合計15分)
- 家:1分×3本(録画)…出だしだけ練習。最初の一文の安定が最重要。
- 少人数:3分1本…家族や同僚2人の前で。フィードバックは良かった点を1つだけ。
- 小会議:5分1本…ルーティンを本番と同じ順で実施→最後に「次に直す一点」だけメモ。
まとめ:震えは「敵」ではなく、整える合図
声が震えるのは、体があなたを守ろうとしているサイン。吐く長めの呼吸→声のウォームアップ→一点注視→最初の一文の順で整えると、高ぶっても戻れる状態に近づきます。悩みが深いときは、専門家と一緒に練習設計をしてみましょう。
参考文献
- Fagioli S, et al. Heart rate variability as a predictor of anxiety outcomes. 2025. PubMed
- Premkumar K, et al. Virtual reality and biofeedback for performance anxiety. 2024. PubMed
※本記事は一般情報です。症状が強く長引く場合は、医療機関や専門職にご相談ください。
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