育休から復帰して半年、仕事・家事・育児に全力投球し続けた結果、心も体も限界…。そんなあなたの「完璧を目指す努力」は、実は心の摩耗(バーンアウト)につながりやすい状態です。親として、働く人として、ひとりの人間として、「ほどほどにやる力」=“いい加減”でいることが、健やかさを取り戻す鍵になります。心理学的・医学的な観点から、そのヒントをお伝えします。

育休から職場復帰して半年。毎日が時間との戦いです。
子どもとの時間も、仕事も、家事も全部を完璧にしようとして疲れ切っています。
クロ先生が「完璧主義をやめることが大切」とおっしゃっていましたが、「いい加減になる」って、どうすればいいのでしょうか…。

非常に大切な気づきです。完璧主義(perfectionism)は一見「頑張り屋さんの美徳」に見えますが、実は燃え尽き症候群(バーンアウト)の大きな要因になり得ます。
最近の研究でも、育児と仕事を両立する親において、完璧主義的な傾向がストレスや抑うつを強めることが明らかになっています(Zbrodska et al., Front Psychol, 2022(PMID: 36544459))。

「完璧を目指す=失敗を避けたい気持ち」が強いほど、自分を責めやすくなります。
「いい加減」とは、決して手抜きではなく、自分にも他人にも“ちょうどいい距離”で接する柔軟さのこと。
まずは「全部ちゃんとやらなきゃ」という思考をゆるめ、「今日は〇〇ができただけでOK」と自分に言ってみることから始めましょう。
「完璧主義」と「バーンアウト」の関係:医学的視点
Zbrodskaらの研究(Front Psychol, 2022, PMID: 36544459)では、子育て中の親における「親の燃え尽き(Parental Burnout)」を評価する尺度の妥当性が示され、完璧主義傾向が高いほど、感情的疲弊・無力感・自己否定が強まることが確認されました。
また、完璧主義はストレスに対する認知的柔軟性を下げ、うつ症状や怒りの増加と関連すると報告されています。
自分を追い詰めないための「いい加減」実践Tips
- 「〇〇しなきゃ」を「〇〇できたらいいな」に言い換える
言葉を柔らかくすることで、無意識の義務感を減らせます。 - 「60点の行動」を意識的にOKにする
家事や仕事も「そこそこ」でOK。完成より継続を大切に。 - “よくやってる”自分への声かけを習慣化
子どもへの声かけと同じように、自分にも「今日もありがとう」と伝える。 - 週1回、30分の「自分タイム」を死守
本当に回復力を高めるには、他人のためでない時間が不可欠です。
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投稿者プロフィール

- 精神科医/マインドルート代表医師
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2020年 東海大学医学部卒業。総合病院、離島医療、児童精神科などでの診療を経て、現在は急性期医療から在宅医療まで幅広い臨床現場に携わりながら、子どもから大人までのメンタルケアにも従事。
試験前やスポーツ前の緊張、不安定な集中力、やる気の波などに対し、スポーツメンタルトレーニングの視点を取り入れた自律訓練法や認知的アプローチを活用。オンラインで気軽に受けられるメンタル支援サービス「マインドルート」を運営。
「禁煙したいけどやめられない」「本番に強くなりたい」「緊張を力に変えたい」といった悩みに寄り添い、心と行動を整えるサポートを行っている。
また、「子育てがきつい・しんどい」と感じる方の悩みにも、自身の育児経験をもとに等身大の視点で発信。PubMedなどの論文を通じた確かなエビデンスに基づき、信頼できる情報をわかりやすくコラム形式で届けている。
所属学会:日本精神神経学会、日本神経精神薬理学会、かながわ地域精神科医会
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