本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

“もう限界”と思ったママへ。感情と脳を整えるリセット術

【専門家対話コラム】“もう限界”の前に——サッと効く〈脳リセット〉3手

イライラは「性格」ではなく「脳の疲れ」のサイン。深呼吸が苦手でも大丈夫。ここでは、30〜60秒でできる切り替えワザを、医学の根拠とともにスッと読める形でまとめます。

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読者:夕方になると強い口調になってしまいます。止め方はありますか?
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ハタケ:まずは自分を責めないこと。前頭前野(ブレーキ)が疲れているだけ。短い休憩で戻ります。
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クロ先生:合言葉は「小分けの切り替え」。1分あれば十分、積み重ねが効きます。

なぜ効く?(しくみ)

脳には警報役の扁桃体と司令塔の前頭前野があります。ストレスが続くと扁桃体が過敏になり、前頭前野の働きが落ちて「言いすぎ」「怒りすぎ」になりやすくなります。

感情のラベリング(「いま怒り5/10」などと一語で表す)は、扁桃体の反応を下げ、前頭前野を働かせる示唆があります。さらに数十秒のマイクロブレイクは、疲労の軽減と活力の回復に小〜中等度の効果が報告されています。難しいテクニックは不要です。

今日からできる手順

  1. ひと言メモ(30〜60秒):小声で「疲れ」「不安」「怒り3/10」とだけ言うか、紙に一語。評価や反省は後回し。
  2. 3秒アイブレイク:目を閉じて、長く吐く。視覚刺激をオフにして前頭前野に余裕をつくる。可能なら30秒〜2分の小休止を追加。
  3. スイッチ1個だけ:好きな曲を10秒/ハンドクリームの香りで一呼吸。置き場所を固定し、迷わず使えるようにしておく。
コツ:(1)うまくいかない日も普通。(2)子どもの前でやりにくい時はキッチンや洗面所で数十秒退避。(3)香りが苦手なら「手洗い」「窓を開ける」「冷水で顔を洗う」で代用。

ミニケース

Before:夕方のワンオペ。宿題・お風呂・夕食で声が荒くなる。
After:「怒り5/10」とラベリング→キッチンで30秒退避&長い呼気→好きな曲を10秒。戻ると声量が下がり、「一緒に3分だけやろう」と声かけ。翌日も同じ手順で再現できた。

よくある質問(FAQ)

Q. 深呼吸が苦手です。
A. 吸うより吐くを長く。目を閉じるだけでも刺激が減ります。

Q. その場で休むとサボりに見えませんか?
A. 「ちょっと落ち着いて戻るね」と一言だけ宣言。数十秒で戻るのがコツです。

Q. ラベリングしても効かない日があります。
A. 睡眠や体調で効き目はぶれます。手順を固定して「準備運動」にしましょう。

参考文献(PubMed)

  • Lieberman MD, et al.(2007)Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity. Psychological Science. PMID: 17576282 PubMed
  • Albulescu P, et al.(2022)“Give me a break!” A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks. PLOS ONE. PMID: 36044424 PubMed

※本記事は一般情報です。気になる症状・治療の判断は、資格を持つ専門家にご相談ください。

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