本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

試合中のイライラと集中力低下をどう乗り越える?感情コントロールの科学的アプローチ

今日の要点  怒っても戻れる 90秒ピットイン 一言ルーティン

“結果”より“立て直し”を練習すると、終盤ほど静かに強くなれます。

心が波立つのは、ちゃんと戦っている証拠

判定が揺れる、相手の挑発、観客のざわめき。胸の奥が熱くなるのは、あなたが真剣だから。
ここでは、怒らない人になるのではなく、怒っても戻れる自分を育てるための小さな手順を置いておきます。ベンチでも、コートの端でも、すぐできることだけ。

なぜ“イラッ”で集中が切れるのか(しくみは簡単でいい)

強い怒りや悔しさが立つと、扁桃体(警報役)が前に出て、前頭前野(作戦役)の働きが落ちやすくなります。これは誰にでもある普遍的な反応。だからこそ、作戦役に席を戻してあげる90秒を用意しておきます。

90秒で姿勢を立て直す:ゲーム中の“ピットイン”

  1. 4–6呼吸 × 5回:4秒吸って6秒吐く。吐くほうを長く、肩を落とす。
  2. 視線を一点固定:床のラインや自分の靴紐。3呼吸ぶんだけ。
  3. 感情に短いラベル:「怒り7/10」「悔しさ5/10」。点数はざっくりでOK。

呼吸でブレーキ、視線で“今”に戻り、ラベルで感情を暴れさせない。やることは、それだけ。

言葉を着替える:心のトゲを抜く一言

心の中の言い換え
  • 「最悪の判定だ」→ 「ここで保つ選手が勝つ」
  • 「相手が煽ってくる」→ 「リズムを崩しに来ている」
  • 「崩れた」→ 「いま戻る練習の場」
口に出す“一言ルーティン”
  • 「深く、長く」
  • 「次の一手だけ」
  • 「足・目・構え」

短く、同じ言葉。おなじみの合図は、それだけで落ち着きを呼びます。

プレー前の3手ルーティン(10秒)

  1. 足:足裏を感じる→重心を真ん中へ。
  2. 目:一点を見る→視野を少し広げる。
  3. 構え:肩を落として、キーワードを一言(例:「前へ」)。

道具・ボール・トスなど競技に合わせて微調整してください。

判定に気持ちを持っていかれた時の“リペアトーク”例
  • 「オーケー、ここは耐える番。次の配球(=自競技の“戦術”)に集中」
  • 「修正は1ミリでいい。距離だけ」
  • 「相手の得意は出た。こちらの型に戻す」

7日間ミニドリル(家でもできる)

  • Day1–2:4–6呼吸を朝晩1分。言葉は「深く、長く」。
  • Day3–4:練習で“ミス直後”にラベル付け(怒り/悔しさの点数化)。
  • Day5–6:プレー前の3手ルーティンを10回反復(実戦速度で)。
  • Day7:試合形式で「戻り時間」を計測(崩れ→再集中まで)。短くなれば合格。
読み終えたら、ここだけ実行
  1. 4–6呼吸 × 5回(今すぐ)
  2. 一言ルーティンを1つ決める(紙に書く)
  3. 次の練習で「崩れ→戻る時間」を測る

自分の競技に合わせた“10秒ルーティン”を一緒に整えたい方は、オンライン30分相談で作戦会議をどうぞ。


試合後3分の“振り返りカード”

ベンチやロッカーで、今日の自分を静かに整える小さな手順。

  1. 呼吸30秒:4秒吸って6秒吐くを3回。
  2. 感情ラベル:いまの感情をひと言(例:怒り7/10・悔しさ5/10)。
  3. 技術1ミリ修正:「次は◯◯を1ミリだけ直す」(例:距離/入り足)。

自分専用“10秒ルーティン”を30分で作る

次に読むと効く、3本

※本文テーマに直結する3本だけを選定。記事ごとに差し替える運用がおすすめです。

よくある質問

Q. 怒りが強すぎて呼吸どころじゃない時は?
A. まず視線を足元やラインに固定して10秒。つぎに「肩を落とす→吐く」を先に。吐く動作ができれば、吸うは自然に入ってきます。

Q. ルーティンの言葉は何個まで?
A. 1つで十分です(例:「次の一手だけ」)。短く、試合を通して同じ言葉を使うと落ち着きが早まります。

Q. 判定に気持ちが持っていかれた後の合図は?
A. 「いま戻る練習中」と心の中で宣言 → 4–6呼吸×3回 → “技術1ミリ修正”の順に戻します。

参考文献(PubMed)

  • Arnsten AFT. Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function. Nat Rev Neurosci. 2009. PMID: 19455173 PubMed
  • Lieberman MD, Eisenberger NI, Crockett MJ, Tom SM, Pfeifer JH, Way BM. Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychol Sci. 2007. PMID: 17576282 PubMed
  • Laborde S, Mosley E, Thayer JF. Heart Rate Variability and Cardiac Vagal Tone in Sports, Exercise, and Physical Activity: Practical Recommendations. Front Psychol. 2017. PMID: 28265249 PubMed

※このページの内容は一般情報です。競技規則・指導方針に従い、必要時は専門家へご相談ください。

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