“結果”より“立て直し”を練習すると、終盤ほど静かに強くなれます。
心が波立つのは、ちゃんと戦っている証拠
判定が揺れる、相手の挑発、観客のざわめき。胸の奥が熱くなるのは、あなたが真剣だから。
ここでは、怒らない人になるのではなく、怒っても戻れる自分を育てるための小さな手順を置いておきます。ベンチでも、コートの端でも、すぐできることだけ。
なぜ“イラッ”で集中が切れるのか(しくみは簡単でいい)
強い怒りや悔しさが立つと、扁桃体(警報役)が前に出て、前頭前野(作戦役)の働きが落ちやすくなります。これは誰にでもある普遍的な反応。だからこそ、作戦役に席を戻してあげる90秒を用意しておきます。
90秒で姿勢を立て直す:ゲーム中の“ピットイン”
- 4–6呼吸 × 5回:4秒吸って6秒吐く。吐くほうを長く、肩を落とす。
- 視線を一点固定:床のラインや自分の靴紐。3呼吸ぶんだけ。
- 感情に短いラベル:「怒り7/10」「悔しさ5/10」。点数はざっくりでOK。
呼吸でブレーキ、視線で“今”に戻り、ラベルで感情を暴れさせない。やることは、それだけ。
言葉を着替える:心のトゲを抜く一言
- 「最悪の判定だ」→ 「ここで保つ選手が勝つ」
- 「相手が煽ってくる」→ 「リズムを崩しに来ている」
- 「崩れた」→ 「いま戻る練習の場」
- 「深く、長く」
- 「次の一手だけ」
- 「足・目・構え」
短く、同じ言葉。おなじみの合図は、それだけで落ち着きを呼びます。
プレー前の3手ルーティン(10秒)
- 足:足裏を感じる→重心を真ん中へ。
- 目:一点を見る→視野を少し広げる。
- 構え:肩を落として、キーワードを一言(例:「前へ」)。
道具・ボール・トスなど競技に合わせて微調整してください。
判定に気持ちを持っていかれた時の“リペアトーク”例
- 「オーケー、ここは耐える番。次の配球(=自競技の“戦術”)に集中」
- 「修正は1ミリでいい。距離だけ」
- 「相手の得意は出た。こちらの型に戻す」
7日間ミニドリル(家でもできる)
- Day1–2:4–6呼吸を朝晩1分。言葉は「深く、長く」。
- Day3–4:練習で“ミス直後”にラベル付け(怒り/悔しさの点数化)。
- Day5–6:プレー前の3手ルーティンを10回反復(実戦速度で)。
- Day7:試合形式で「戻り時間」を計測(崩れ→再集中まで)。短くなれば合格。
- 4–6呼吸 × 5回(今すぐ)
- 一言ルーティンを1つ決める(紙に書く)
- 次の練習で「崩れ→戻る時間」を測る
自分の競技に合わせた“10秒ルーティン”を一緒に整えたい方は、オンライン30分相談で作戦会議をどうぞ。
試合後3分の“振り返りカード”
ベンチやロッカーで、今日の自分を静かに整える小さな手順。
- 呼吸30秒:4秒吸って6秒吐くを3回。
- 感情ラベル:いまの感情をひと言(例:怒り7/10・悔しさ5/10)。
- 技術1ミリ修正:「次は◯◯を1ミリだけ直す」(例:距離/入り足)。
次に読むと効く、3本
※本文テーマに直結する3本だけを選定。記事ごとに差し替える運用がおすすめです。
よくある質問
Q. 怒りが強すぎて呼吸どころじゃない時は?
A. まず視線を足元やラインに固定して10秒。つぎに「肩を落とす→吐く」を先に。吐く動作ができれば、吸うは自然に入ってきます。
Q. ルーティンの言葉は何個まで?
A. 1つで十分です(例:「次の一手だけ」)。短く、試合を通して同じ言葉を使うと落ち着きが早まります。
Q. 判定に気持ちが持っていかれた後の合図は?
A. 「いま戻る練習中」と心の中で宣言 → 4–6呼吸×3回 → “技術1ミリ修正”の順に戻します。
参考文献(PubMed)
- Arnsten AFT. Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function. Nat Rev Neurosci. 2009. PMID: 19455173 PubMed
- Lieberman MD, Eisenberger NI, Crockett MJ, Tom SM, Pfeifer JH, Way BM. Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychol Sci. 2007. PMID: 17576282 PubMed
- Laborde S, Mosley E, Thayer JF. Heart Rate Variability and Cardiac Vagal Tone in Sports, Exercise, and Physical Activity: Practical Recommendations. Front Psychol. 2017. PMID: 28265249 PubMed
※このページの内容は一般情報です。競技規則・指導方針に従い、必要時は専門家へご相談ください。
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