「成功したのに、なぜか怖い」――その気持ちは自然な心理反応です。
スポーツ心理学では「失敗恐怖(fear of failure)」が成功直後に高まることが知られています。
・目標を再設定して「結果」より「プロセス」へ意識を移す
・あえて失敗を許容する練習を取り入れる
・結果の「原因帰属」を整える
こうした実践で、プレッシャーに飲まれず次のステップへ進むメンタルの整え方を、専門家が丁寧に解説します。
成功したのに怖い――この気持ち、普通ですか?
読者:市民大会で優勝したのですが、その後、結果を出せないのが怖くなってしまいました。次もうまくいくとは限らないと思うと、不安で練習にも身が入りません…。
ハタケ:それはとても自然な反応ですよ。実は「一度成功すると、その後の失敗が怖くなる」という心理は、スポーツ心理学でもよく知られています。特に「失敗恐怖(fear of failure)」という考え方が関係しているんです。
クロ先生:最近の研究でも、この問題が注目されています。たとえば、Front Psychol(2025)の研究では、「成功経験のあるアスリートほど、次の失敗を過度に意識しやすく、それが“萎縮”や“チョーキング(極度の緊張で力が出せなくなる)”につながる」と報告されています。
ハタケ:要するに、「うまくいったからこそ、次は失敗できない」と感じてしまうんですね。でも実際には、すべてのパフォーマンスが完璧である必要はありません。むしろ、プレッシャーを感じること自体が、真剣に取り組んでいる証です。
実生活でできる3つの対処法
- ①「次の目標」を再設定する:過去の成功にとらわれず、「今回は新しいチャレンジ」と考えると、心理的負担が減ります。
- ② 「うまくいかなくてもいい練習」をあえて行う:失敗を受け入れる練習を通じて、「失敗=悪」ではないと思えるようになります。
- ③ 原因帰属のトレーニング:同研究では、「結果を自分の努力や準備に帰属させる練習」が、不安を軽減するとされています。
クロ先生:また、2025年のRCT研究では、脳への軽度な刺激(tDCS)がアスリートの不安を軽減し、集中力を高めたという報告もあります。これは特殊な技術ですが、「自分を整える方法」は色々あるということですね。
あとがき:結果に縛られない「今」を生きる
ハタケ:大切なのは「成功=プレッシャー」と思い込まず、成長のひとつの通過点として見つめ直すことです。あなたが感じている不安は、真剣に取り組んできた証。だからこそ、無理に押さえつけず、上手につきあっていきましょう。
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投稿者プロフィール

- 精神科医/マインドルート代表医師
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2020年 東海大学医学部卒業。総合病院、離島医療、児童精神科などでの診療を経て、現在は急性期医療から在宅医療まで幅広い臨床現場に携わりながら、子どもから大人までのメンタルケアにも従事。
試験前やスポーツ前の緊張、不安定な集中力、やる気の波などに対し、スポーツメンタルトレーニングの視点を取り入れた自律訓練法や認知的アプローチを活用。オンラインで気軽に受けられるメンタル支援サービス「マインドルート」を運営。
「禁煙したいけどやめられない」「本番に強くなりたい」「緊張を力に変えたい」といった悩みに寄り添い、心と行動を整えるサポートを行っている。
また、「子育てがきつい・しんどい」と感じる方の悩みにも、自身の育児経験をもとに等身大の視点で発信。PubMedなどの論文を通じた確かなエビデンスに基づき、信頼できる情報をわかりやすくコラム形式で届けている。
所属学会:日本精神神経学会、日本神経精神薬理学会、かながわ地域精神科医会
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