本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

EMDRとは?パフォーマンス不安や試験ストレスにも効果的な最新メンタル療法

EMDRって何?――トラウマだけじゃない、“本番の緊張”にも届く理由

本番前になると心臓がバクバク、手が汗ばみ、頭が真っ白……。
EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)はPTSDの治療で知られていますが、こうしたパフォーマンス不安にも応用が広がっています。ポイントは、過去の記憶と現在の反応の結びつきをゆるめること。すると「いま」に戻りやすくなり、集中が保ちやすくなります。

仕組みを3行で

  • つらい記憶や不安イメージを“安全な手順”で取り上げる
  • 左右交互刺激(眼球運動・タッピング等)で再処理を促す
  • 記憶の“刺”が丸くなり、身体反応が過敏に出にくくなる
ハタケ

ハタケ(精神科医):“緊張そのものを消す”のではなく、引き金に過敏に反応しない神経系をめざします。

どんな場面で役立つ?

  • 試験:過去の失敗体験を思い出して動悸が強まる/問題を前に固まる
  • スピーチ・発表:“笑われた”記憶がフラッシュし、声・手がふるえる
  • スポーツ:決定機で“前のミス”がよみがえり、身体が縮こまる

EMDRは、こうした「過去→現在」の誤作動回路に働きかけ、本番の自己調整(落ち着き・集中・切り替え)を助けます。

Flash Technique(フラッシュ・テクニック)とは?

EMDRの原理を応用した短時間介入で、つらいイメージに長く留まらずに再処理を促す工夫が特徴です。
近年の学生対象研究では、試験不安の軽減が報告されています(小規模・予備的研究が中心)。

クロ先生

クロ先生(臨床心理士・公認心理師):「怖さを無理やり抑える」より、反応しにくい回路をつくるイメージに近いですね。

セッションの流れ(イメージ)

  1. 安全づくり:呼吸・グラウンディングで土台を整える
  2. 引き金の特定:過去の場面・現在の身体反応・否定的信念を言語化
  3. 両側性刺激:眼球運動やタッピングで再処理(Flash等を併用する場合あり)
  4. 再評価:落ち着き・自己効力感の確認、本番用の合図言葉を決める

今日からできる「安全な自己ケア」3つ

  • 4-8呼吸×3セット:4秒吸って8秒吐く。心拍と筋緊張を落とし“戻る”準備に。
  • バタフライ・ハグ(軽く)30秒:両腕を胸の前で交差し、左右交互にやさしくタップ。※不快が強まる場合は中止。
  • 合図言葉を1つ:「ここから」「落ち着いて」など。本番のスイッチとして練習しておく。

※これらは一般的な安定化スキルです。EMDRそのものは自己流で実施しないでください。

よくある質問

Q. オンラインでも受けられますか?
適切な準備と手順があれば可能という報告があります。強い反応が想定される場合は対面を検討します。
Q. 何回くらいで効果を感じますか?
症状・目標・安全性によって大きく個人差があります。短期で変化を感じる人もいれば、段階的に進める方が安全なケースもあります。
Q. 受ける際の注意は?
PTSDや解離症状が疑われる方、強いフラッシュバックがある方は、EMDR訓練を受けた専門家と安全計画を立てて進めましょう。
参考(研究・総説)
・オンラインEMDRの有効性を示す報告(対面との比較含む):Lenferink et al., 2022(PubMed: 35793028
・パフォーマンス不安/試験不安への短時間介入:Flash Technique に関する学生対象の予備的研究(Akyolら, 2025 など)
※効果には個人差があり、適応評価と安全な進行が前提です。

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