本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

SNS時代の「比較不安」を乗り越える:30代後半からの自分軸キャリアと心の整え方

SNS時代の自己否定には「比較のクセ」を見直す視点が必要。安心感の土台は“自分の内側”にあります。

SNSで他人の成功が目に入るたびに、自分が取り残されているような不安や焦りを感じてしまう…。
30代後半という節目に差しかかり、仕事にも慣れたはずなのに「このままでいいのか?」というモヤモヤが消えない。
そんな気持ちは、決してあなた一人だけのものではありません。今回は、現代人に多い「比較不安」と「自己肯定感の低下」の背景を医学・心理学的に解説し、明日からできる実践のヒントをご紹介します。

読者の声

クロ先生、ハタケ先生。いつもコラムを読んでいます。
僕は30代後半のサラリーマンです。仕事はそれなりに頑張ってきましたが、ふと『このままでいいのか?』と漠然とした不安に襲われることがあります。
SNSで同年代の成功者を見ると、自分だけが置いていかれているような焦りを感じ、自己肯定感が下がってしまいます。
ハタケ先生、なぜ私たちは他人と比べてしまうのでしょうか?
クロ先生、この『漠然とした不安』を解消するために、何を始めれば良いかアドバイスをいただけますか?

ハタケ医師

「他人と比べてしまう心」は、人間に本能的に備わった社会的比較(social comparison)という性質です。
特にSNSのように“見せたい自分”が切り取られた世界では、自分とのギャップが大きくなり、焦燥感や自己否定につながりやすくなります。
最近の研究では、自己肯定感が低下しているときほど、他人と比較する頻度が増え、抑うつや不安が強まりやすいと報告されています(Evans et al., Autism Adulthood, 2024(PMID: 39139513))。

クロ先生

「このままでいいのか?」という不安は、変化への準備段階とも言えます。
まずは“漠然とした不安”に形を与えることが大切。
そのためにおすすめなのが「内的キャリアの棚卸し」。
実績や肩書きではなく、自分の価値観・信念・やりがいを言語化することが、不安の正体を浮き彫りにし、他人軸から自分軸へのシフトを助けてくれます。

SNS時代の「比較不安」と自己肯定感:医学的視点

Evansら(Autism Adulthood, 2024, PMID: 39139513)の研究では、自己開示や本音を抑える“マスキング傾向”が、自己肯定感の低下や精神的ストレスの増大に関係していると示されました。
これは発達特性に限らず、一般成人にも当てはまる傾向であり、他人に合わせすぎる“比較ベース”の生き方が、自分らしさを失わせてしまう可能性を示唆しています。

比較のループを抜け出すための3つの実践Tips

  • 「人と比べたくなったときの言葉」を用意しておく
    例:「他人の人生には他人の地図がある」「これは参考であって、答えじゃない」など。
  • 1週間に1回、自分の“内的成功”を記録する
    成果ではなく「嬉しかった」「納得できた」体験を記録しましょう。
  • スマホの“ホーム画面断捨離”を実施する
    SNSのアプリは隠す・通知を切る・週末のみ開く等、視覚的な刺激を減らす工夫が有効です。
畠山 博行 | マインドルート代表医師

2020年 東海大学医学部卒業。総合病院、離島医療、児童精神科などでの診療を経て、現在は急性期医療から在宅医療まで幅広い臨床現場に携わりながら、子どもから大人までのメンタルケアにも従事。 試験前やスポーツ前の緊張、不安定な集中力、やる気の波などに対し、スポーツメンタルトレーニングの視点を取り入れた自律訓練法や認知的アプローチを活用。オンラインで気軽に受けられるメンタル支援サービス「マインドルート」を運営。 「禁煙したいけどやめられない」「本番に強くなりたい」「緊張を力に変えたい」といった悩みに寄り添い、心と行動を整えるサポートを行っている。 また、「子育てがきつい・しんどい」と感じる方の悩みにも、自身の育児経験をもとに等身大の視点で発信。PubMedなどの論文を通じた確かなエビデンスに基づき、信頼できる情報をわかりやすくコラム形式で届けている。 所属学会:日本精神神経学会、日本神経精神薬理学会、かながわ地域精神科医会

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