本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

緊張で身体が固くなる理由とは?脳科学とスポーツ心理学で読み解く対処法

緊張で身体が固くなるのはなぜ?──脳科学とスポーツ心理学から整理する

本番直前に肩や顎がこわばる、呼吸が浅くなる。これは単なる「気のせい」ではなく、 視床下部‐自律神経系が作動して交感神経が優位になり、アドレナリン/ノルアドレナリンの影響で 筋緊張(筋トーン上昇)が起こる生理反応です。スポーツ心理学ではこうした身体症状を ソマティック不安と呼び、震え・手汗・心拍上昇・浅い呼吸などがセットで現れやすいと説明されます。

トップアスリートの発信が示すこと

世界的トップ選手もメンタル面の課題やコンディション調整の難しさを公表しています。 「身体の健康は心の健康と不可分」というメッセージは、緊張への対処を技術として学ぶ重要性を後押ししています。 参考:特集記事

筋緊張とパフォーマンスの関係

プレッシャー下で筋活動が過度に高まると、動作の正確性やスピードが低下しやすいことが報告されています。 例:ゴルフのパッティングで緊張に伴う筋活動増加と成績低下の関連。 参考:PubMed: 20409012

スポーツメンタルトレーニングの実践法

筋弛緩法(PMR)は「意図的に力を入れる→ゆるめる」を繰り返し、全身の緊張を下げる代表スキル。 運動イメージ力の向上や不安軽減に有効という報告があります( PubMed: 39792894)。 併せて、呼吸(吐きを長く)や、行動に直結するセルフトーク(例:「最初の一歩」)を組み合わせると安定します。

※自律訓練法(AT)も有効です。確認用: 注意画像6つの公式

試合前3分ルーティン(すぐ使える)

  1. 足裏固定(30秒):足の重さ・温かさを感じ、重心を安定。
  2. 吐いて整える(60秒):長く吐く→自然に吸う(数える必要なし)。
  3. PMRミニ(60秒):肩→手→顎の順に「5秒入れる→10秒抜く」。
  4. 一言スイッチ(30秒):直前の合図を決める(例:「最初のプレーに全集中」)。

よくある質問

直前に身体が固まったらまず何をする?
「吐く」を最優先。続いて肩・手・顎のPMRミニで末端から力みを抜き、最後に「最初の動き」だけをイメージして再起動します。
普段の練習にどう落とし込む?
練習の冒頭と締めに「呼吸30秒+一言スイッチ」を固定化。試合だけ特別なことをせず、練習と同じ手順にします。
ATとPMRの使い分けは?
即効性はPMR、じわっと落ち着きを作るのはAT。両方を知り、当日のコンディションで選べるようにしておくと安定します。

参考研究(外部リンク)

  • Hill DM et al. Choking in Sport: A Review. International Review of Sport and Exercise Psychology(総説): DOIリンク
  • Nieuwenhuys A, Oudejans RRD. Anxiety and performance: perceptual-motor behavior in high-pressure contexts.(高圧状況のレビュー): PubMed本文(一部OA)
  • Manzoni GM et al. Relaxation training for anxiety: a ten-year systematic review with meta-analysis.(リラクセーション系のメタ解析): BMC Psychiatry
  • Conrad A, Roth WT. Muscle relaxation therapy for anxiety disorders.(筋弛緩法のレビュー): PubMed
  • Todosssaint L et al. Progressive muscle relaxation, deep breathing, guided imagery(PMR/呼吸/イメトレの比較実験): PMC
  • 競技不安の評価ツール:CSAI-2 概要と検討: PubMed

スポーツメンタルトレーニング

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