本番で実力を出せる人の違いは?――「緊張を味方にする」最新メンタル術
練習ではできるのに、試合になると体が固まる――その差は「才能」ではなく、当日の心の状態をどう設計できているかです。 ここではスポーツ心理の視点から、試合前のルーティン/書いて下ろす/呼吸で整えるの3本柱で、本番の自分を安定させる方法を解説します。
なぜ本番で固まる?脳と身体のしくみ
強いプレッシャー下では、不安で思考が過活動になり、注意が散ったり(相手・観客・結果など)、細かい運動制御が乱れやすくなります。 2025年の研究では、大学サッカー選手でメンタルの安定と注意コントロールがパフォーマンスに関係することが示されています(Assadourian ら, PMID:40137785)。 また、考えすぎ回路が過剰なときは、軽微な脳刺激で不安が下がり認知成績が上がる報告もあり(Joshi ら, PMID:40090976)、「心の状態」が鍵であることが裏づけられています。

ハタケ(精神科医):緊張は悪者ではありません。「どう整えるか」を決めておくと、味方になります。
① 試合前3点ルーティン:身体・視線・言葉を固定する
- 身体:肩→胸→股関節の順に3呼吸ストレッチ。同じ順番を毎回。
- 視線:コートの一点→相手の腰→味方の番号へと視線を流す。注意の居場所を決める。
- 言葉:短い合図言葉を1つ(例:「ここから」)。毎回同じが効きます。
② 書いて下ろす:2分プリダンプ
試合前に紙へ「不安・期待・今日の小目標」を箇条書きで2分。脳内の雑音を外に退避させるだけで、注意の乱れが鎮まり、 今やることに戻りやすくなります。(※スマホではなく紙がおすすめ)
③ 呼吸で「今ここ」に戻す:4-8ブリージング
4秒吸って8秒吐く×3セット。吐く時間を長くすると副交感神経が働き、体の力みと心拍を同時に落とせます。 ミス直後やタイムアウト時のミクロリセットにも最適。

クロ先生(臨床心理士・公認心理師):練習時から同じ手順で行い、本番で再現するのがコツです。
試合前60分のミニ・タイムライン(例)
- −60分:軽い補食+ウォームアップ開始。今日の小目標1つを声に出す。
- −30分:3点ルーティンの通し練習(身体→視線→言葉)。
- −10分:2分プリダンプ(不安・期待・小目標)。
- −3分:4-8ブリージング×3、最後に合図言葉「ここから」。
ミス直後のリセット動作(3秒でOK)
- 手順:背すじを伸ばす → 視線を水平に戻す → 合図言葉を一言。
- ポイント:落ち込むなではなく、戻る型を決めておく。行動が感情を連れ戻します。
練習メニューに落とし込むチェックリスト
- ☐ 練習の最初と最後に「3点ルーティン」を通す
- ☐ 練習試合の前だけ「2分プリダンプ」を試す
- ☐ ミス直後に同じ3秒リセットを入れる
- ☐ 合図言葉は短く固定(例:「ここから」「一つずつ」)
参考文献(読み物として)
- Assadourian A, et al. 2025. 大学サッカー選手における注意とメンタルヘルスの関連(PMID:40137785)
- Joshi V, et al. 2025. 本番前の不安軽減と認知パフォーマンスに関する神経調節の報告(PMID:40090976)
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