【専門家対話コラム】兄弟げんかに飲み込まれる前に——家で使える「通訳スクリプト」
ケンカが始まると、親の心拍は一気に上がりがち。とはいえ、兄弟げんかは気持ちの扱い方を練習する時間にもなります。ここでは「裁判官」ではなく通訳として入るための、短く・やさしい関わり方をまとめました。



なぜ効く?(しくみ)
対立の最中は、子どもも大人も警報役の脳(扁桃体)が働きやすく、落ち着きを助ける前頭前野の余裕が減りがちです。そこで、気持ちに名前を付ける(ラベリング)、事実を短く並べる、選びやすい二択の順に進めると、思考の回路に戻りやすくなります。完全にうまくいかない日があっても大丈夫。練習の時間と捉えましょう。
今日からできる手順(レフェリーではなく通訳になる)
- 15秒セーフティ:叩く・投げるが見えたら距離を取り、危ない物をどかす。説教は後。自分はゆっくり吐く。
- リプレイ質問:「何が起きた?」「どこから?」——どっちが悪いは封印。事実だけ短く。
- 気持ちの通訳→二択:「悔しかったんだね」「取られた感じがした?」→「タイマー2分で交代?別のもので遊ぶ?」など選びやすい二択。
ミニケース(家でのメモから)
After:親が深呼吸→「ここで止まろう。何が起きた?」→兄「作ってた」、弟「車にしたい」→親「兄=続けたい/弟=車にしたい、だね」→「タイマー2分で交代?別のブロック出す?」→交代を選択。5分で自然解散。「通訳→二択→予告(あと1回)」が再現ポイントでした。
よくある質問(FAQ)
Q. すぐヒートアップしてしまいます。
A. まずは自分のラベリングを小声で。「焦り8/10」「疲れ6/10」。波が下がってから子どもへ声かけ。
Q. 片方ばかり損していませんか?
A. 「順番」「タイマー」「二択」など仕組みで公平さを作ると、親の“裁き役”が減って楽に。
Q. 何度言っても戻ります。
A. 普段から練習タイムを作るのも一案。落ち着いている時に「通訳ごっこ」を1分だけ。実戦で使いやすくなります。
参考文献(PubMed)
- Buist KL, Deković M, Prinzie P(2013)Sibling relationship quality and child psychopathology: meta-analysis. Clin Psychol Rev. PMID: 23159327 PubMed
- Smith J, Ross H(2007)Training parents to mediate sibling disputes. Child Dev. PMID: 17517005 PubMed
- Lieberman MD, et al.(2007)Affect labeling and amygdala activity. Psychol Sci. PMID: 17576282 PubMed
※本記事は一般情報です。けがや強い暴力がある場合は安全確保を最優先にし、必要に応じて医療機関・公的窓口へご相談ください。
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