試合前に会場を見に行くのって意味あるの?

読者:
プロのテニス選手って、どんなメンタルトレーニングをしてるんですか?
この前、試合前に会場を見に行ったら少し安心できました。意味ありますか?

ハタケ:
あります。人は「未知」に不安を感じやすいので、場所に慣れる=未知を減らすことは理にかなっています。研究でも、会場に似た状況をあらかじめ体験しておくと不安が下がりやすい、という報告があります。VR(仮想現実)で試合のような緊張を再現して練習する研究も進んでいます(後掲の参考)。

クロ先生:
現地下見は心理学でいう「事前露出」。会場の音・匂い・照明・コートの色、観客席の位置を知るだけでも、脳が「ここは知ってる場所」と学習します。安心感が少し上がるだけでも、技術に集中しやすくなります。
最新知見のポイント(やさしく要約)
- VRで“試合の緊張”を再現:若い選手を対象に、VRの試合シーンが実試合に近いストレス反応を起こせる=本番に向けた練習素材になるという報告。(Frontiers in Sports and Active Living, 2025)
- 「慣らし」セッションの効果:本番前に似た条件で数回動いておくと、予期不安が下がりやすい示唆。(運動課題の事前慣れ研究)
- 軽いプレーでも気分は上向く:短時間の軽いゲームでも不安軽減や気分改善の効果が見られた報告。(レクリエーション種目での実験)
今日からできる「場慣れ」の三段構え
- まずは無料:スマホだけで疑似下見
- 視覚:会場(または似たコート)をゆっくり一周撮影。ベンチからの視界も1分撮る。
- 聴覚:観客のざわめき・ボール音の環境音を10分録音(スマホでOK)。
- 再生練習:動画+音を再生しながら「最初の60秒だけの手順」をイメトレ(入場→挨拶→1本目サーブのルーティン)。
- つぎに簡易VR:スマホ用ビューアで“没入”
- YouTubeの360°動画(テニス観客席視点・コート視点)を検索し、スマホ用VRビューア(段ボール型など)にセット。
- 1セット5〜7分。最後に4秒吸って6秒吐く×5回で締めてクールダウン。
※酔いやすい人は座って短時間。気分が悪くなったら中止。
- 本格派:ヘッドセットVRで「音・視線・動作」を合わせる
- ヘッドセットで観客ノイズや審判コール音を流し、実際のルーティン動作(ボールつき、トスの手、呼吸)を合わせる。
- 1回10分以内/週1〜2回が目安。やりすぎは逆効果になりやすい。
10分で終わる:会場下見ルート(チェック付き)
- 入口→コートまでの導線を歩く(2分):曲がり角・トイレ・給水位置を確認。
- ベンチに座る(3分):視界の邪魔物(看板・ライト)をチェック。落ち着く視線の順番を決める(左→中央→右)。
- 音になじむ(2分):観客席のざわめき・反響に耳を慣らす。深呼吸を3セット。
- ミニ・ルーティン(3分):サーブ前の型「ボールつき×2→深呼吸→トス→最初のコース宣言(心の中)」までを一度だけ。
実生活に取り入れやすい3つのポイント
- ① 下見(現地 or 疑似):観客席の位置・照明・音の響きに慣れておくと、「未知」が減るので集中しやすい。
- ② イメージトレーニング:最初の60秒だけを具体的に。入場→挨拶→1本目サーブの型まで。
- ③ 軽いウォームアップ:体を動かすと不安は下がりやすい。壁打ち5分、フットワーク1分、呼吸30秒でも十分。

クロ先生:
ポイントは短く・何度も。慣れは回数で育ちます。VRはあくまで補助。本番に近い小さな練習(下見、軽いプレー)を積み上げるのが王道です。
注意メモ
- VRで酔いやすい人は5分以内・座位で。体調が悪くなったら中止。
- 会場の撮影・下見は主催者のルールに従う(撮影NGの場所もあります)。
- 中高生は夜更かしVRは避け、睡眠を優先。練習は日中に。
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