本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

【試合直前】緊張をほぐす呼吸・イメージ・セルフトーク

試合直前の「緊張」で頭が真っ白…そんな時どうすれば?

読者

読者:
サッカーの試合前になると心臓がバクバクして、頭が真っ白になります。練習ではできるのに本番で出せないのが悔しい…。すぐにできる対策はありますか?

ハタケ

ハタケ:
あります。大事なのは「高ぶっても戻れる型」を持つこと。以下の手順は道具なし・短時間で、ピッチでもすぐ使えます。

① トンネル〜入場の90秒ルーティン(その場で)

試合の“入口”で迷わないように、視線・体・言葉の順に整えます。

  1. 0:00–0:20|名前をつける:心の中で「緊張70/心拍速い」と実況。※言語化で過剰反応が下がりやすい。
  2. 0:20–0:50|外向きの注意:スパイクを2回トントン→ピッチ左・中央・右を順にスキャン(観客ノイズも1呼吸だけ聞く)。※“外”に注意を置くと動きが安定。
  3. 0:50–1:30|最初の1プレーを宣言:「キックオフは安全パス右」「最初の守備は内切り」など具体ワードを1つだけ心で言う。※“次の一歩”だけにフォーカス。

② ピッチイン30秒スターター(開始直後の安定)

  • 役割ワードを1つ:DF「ライン寄せ」、MF「前向き」、FW「背後狙い」。
  • 静かな視線:センターサークルの芝目→味方の足元→相手CBの肩の向き。※視線の“置き場”を決めると迷いが減る。

③ プレー間10秒リセット「RESET-10」

ミス後も“短く戻って進む”のが回復の最短ルート。

  1. 3秒:長めの吐気(口すぼめでフー)。
  2. 3秒:タッチラインor相手ゴール角へ一点注視(視線のイカリ=Quiet Eye)。
  3. 4秒:次の一歩」を心で宣言(カバー/逆サイド展開/セーフティ)。

※“もし〜なら”の一行メモを袖に貼っておくと実行率が上がります。

④ セットプレー用:Quiet Eye(視線の型)

プレッシャー下では視線が泳ぎがち。見る場所とタイミングを決めておきます。

  • PK:1秒だけ狙いゾーンを静止注視→最後はボールへ視線移動→蹴る。
  • FK/CK:ターゲット(味方の額 or ニア/ファーの“点”)を1秒注視→助走→インパクト直前にボールへ。

※Quiet Eyeは、プレッシャー下の精度と不安低下に関連する報告があります。

⑤ セルフトークは「指示」と「励まし」を分ける

指示(Instructional):体開かない・縦パス角度」「ファーストタッチ前を見る
励まし(Motivational):やれる」「次の一歩」「落ち着け
…技術は“指示”、メンタルは“励まし”。混ぜないと頭が渋滞します。

⑥ If–Then(その場で動ける一行計画)

  • もし最初のパスをカットされたなら即リカバリー→縦切り」。
  • もし心拍が上がり過ぎたならRESET-10」。
  • もし相手の寄せが速いならワンタッチ→サポート要求」。

家での“15分×2回”準備(前日まで)

  • 動画3本だけ撮る:①キックオフ20秒、②守備の初動、③CKの役割。各30–60秒。…直前に1回だけ見返す“地図”。
  • コール&レスポンス:相棒と合図を1つ決める(DF「寄せる」→味方「カバーOK」)。
  • 言い換え一行:「不安=失敗のサイン」→「本気の証拠。合図で戻れる」。

なぜ効く?(科学のポイントを一言で)

  • Quiet Eye:狙いを1秒ほど静止注視→実行の順は、精度向上と不安低下に関連。(視線の安定が運動制御を助ける)
  • External Focus:身体そのものより“ボール/味方/スペース”などに注意を置くと動きが滑らかに。
  • セルフトーク:指示系と励まし系を適材適所で使うとパフォーマンスが上がりやすい。
  • If–Then:「もしXならYする」の事前決定が、緊張下の迷いを減らし実行力を上げる。
  • リセットの吐気:長めの吐気は交感神経の過剰を落としやすい(呼吸が苦手でも“吐く”だけでOK)。

参考文献(クリック可)

  • プレパフォーマンス・ルーティン(PPR)の有効性:Rupprecht AGO, et al. Meta-analysis. Int Rev Sport Exerc Psychol. Journal page。 [oai_citation:0‡tandfonline.com](https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/1750984X.2021.1944271?utm_source=chatgpt.com)
  • セルフトークとパフォーマンス:Hatzigeorgiadis A, et al. Meta-analysis. Perspect Psychol Sci. 2011. PubMed。最新動向(ラン系レビュー): 2025 mini meta。 [oai_citation:1‡PubMed](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26167788/?utm_source=chatgpt.com) [oai_citation:2‡ResearchGate](https://www.researchgate.net/publication/387867531_Effect_of_self-talk_on_runners%27_performance_systematic_review_and_mini_meta-analysis?utm_source=chatgpt.com)
  • Quiet Eye(視線の静止注視):Wood G, et al. Psychol Sport Exerc. 2011(サッカーPK)。 PubMed / 総説・関連研究: 2024 putting研究。 [oai_citation:3‡PubMed](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21318734/?utm_source=chatgpt.com) [oai_citation:4‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10908801/?utm_source=chatgpt.com)
  • 外向き注意(External Focus)の優位:Chua LK, et al. Meta-analysis. Psychological Bulletin 2021. PDF。 [oai_citation:5‡apa.org](https://www.apa.org/pubs/journals/features/bul-bul0000335.pdf?utm_source=chatgpt.com)
  • 不安を「興奮」に言い換える:Brooks AW. 2014. PDF。 [oai_citation:6‡apa.org](https://www.apa.org/pubs/journals/releases/xge-a0035325.pdf?utm_source=chatgpt.com)
  • If–Then(実行意図)で不安下の行動を後押し:Parks-Stamm EJ, et al. PDF運動課題×不安の研究。 [oai_citation:7‡socmot.uni-konstanz.de](https://www.socmot.uni-konstanz.de/sites/default/files/10_Parks_Stamm_Gollwitzer_Implementation_Intentions_Test_Anxiety.pdf?utm_source=chatgpt.com) [oai_citation:8‡PubMed](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23436769/?utm_source=chatgpt.com)
  • アスリートの不安に対する心理的介入のメタ分析(最新):Frontiers in Psychology, 2025. Open Access。 [oai_citation:9‡Frontiers](https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2025.1621635/full?utm_source=chatgpt.com)

※本記事は一般情報です。体調やメンタルの不調が続く場合は、指導者や医療機関にご相談ください。

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