成功したのに怖い――この気持ち、普通ですか?

読者:
市民大会で優勝したのですが、その後、結果を出せないのが怖くなりました。次もうまくいくとは限らないと思うと、不安で練習にも身が入りません…。

ハタケ:
その感覚は自然です。ここでは便宜上「勝ち後ブルー」と呼びましょう。成功直後ほど「次の失敗」を強く恐れやすい。怖さを否定せず、扱い方を決めておくのがコツです。

クロ先生:
視点を「結果」から「自分で動かせる要素」へ戻す設計にすると、次の一歩が踏み出しやすくなります。以下の手順は今日から使えます。
Step1|48時間メンテ(勝った直後〜2日)
勝利直後は気持ちが上下に振れやすい時間帯。閉じる→棚卸し→再定義の3ステップで次につなげましょう。
- 小さく“閉じる”(5分):優勝写真をフォルダ「おつかれ」へ→画面を閉じる。…反芻(何度も反すう)を減らす合図。
- 2:1メモ(10分):ハイライト2(良かった具体)+ローライト1(次に直す一点)。
- 一行で再定義:「今回は〇〇(例:守備の切り替え)がハマって勝った」。…勝因を“具体”に落とすと、次の行動が見える。
Step2|次戦の「3レーン目標」で縛りをほどく
結果一本勝負だと身が縮こまります。目標を維持/挑戦/遊びの3レーンに分けておきましょう。
- 維持(Keep):前回うまくいった型を8割強度で再現(例:サッカー=前線のプレス合図/テニス=返球後1歩前へ)。
- 挑戦(Stretch):一点だけ伸ばす(例:サッカー=逆サイド展開を前半3回/テニス=逆クロス展開を各セット3回)。
- 遊び(Play):小さな遊び心(例:サッカー=CKの合図を新しく/テニス=1ゲームだけスライス多め)。
Step3|「失敗に慣れる」安全な練習(Error Inoculation)
怖さは未知から生まれます。あえて小さく失敗する稽古で、未知を既知へ。
【サッカー版】4分×3セットの短尺ドリル
共通ルール:成功率は60〜70%に設定/ミスしたら3秒リセット(吐く→視線1点→「次の一歩」)。
- 難コースのパス回し:通らない前提で、リカバリー手順だけ速くする。
- 終盤シミュ:残り10秒で数的不利を作り、「負けゲームの締め方」を練習。
- ミス宣言→即再開:1人1回は「今の判断ミス」と言語化→すぐ再開。
【テニス版】4分×3セットの短尺ドリル
共通ルール:コート内の大きい的(ゾーン)を狙う/成功率60〜70%/ミス後は3秒リセット(吐く→一点注視→キーワード)。
- セカンドサーブ“だけ”タイブレーク(7ポイント):狙いはバック側の大窓。キュー:トス高く・肩入れる・80%。
- S+1パターン(サーブ後の1打まで)限定ラリー(6球):例=デュース側ワイド→フォアのクロス。揺らしカード:逆風/8秒以内に始める/相手の掛け声。
- リターン“ブロック”10本:ノーバックスイングで面を合わせて運ぶ。面まっすぐ・前で当てる・運ぶ。
- タイブレーク5–5 想定(2ポイント先取):80%球速+大窓狙い。結果ではなく「決めた通りに打てた回数」を記録。
- Quiet Eyeサーブ:狙いコーナーを1秒静止注視→トス頂点→直前にボールへ視線。
試合中の10秒リセット(その場で効くミニ手順)
サッカー:長めの吐気3秒→タッチラインor相手ゴール角を一点注視3秒→「次の一歩(カバー/逆サイド/セーフティ)」を心で宣言4秒。
テニス:チェンジコート直後に、吐く3秒→ベースライン奥の一点注視3秒→「S+1はクロス/リターンは面で運ぶ」4秒。
Step4|「帰属リセット」—結果の意味づけを作り替える
同じ結果でも、何に原因を置くかで気持ちは変わります。口頭で比率を宣言してから練習へ。
努力□—□—□—□—□運/準備□—□—□—□—□偶然
例:「今日は努力6:運4。次は“準備”を1マス上げる」。
…“自分で動かせる側”へ比重を戻す練習です。
Step5|1分セルフコーチング(If–Then)
迷いを減らす最短ルートは「もしXならYする」を先に決めておくこと。
- もし練習で足が重いなら「最初の10分は守備の声に全振り」。
- もし前回の勝利を思い出して手が止まるなら「ハイライト2行だけ見て動画を閉じる」。
- もしミスが続くなら「次の一歩:安全パス/カバー(サッカー)/大窓狙い(テニス)」。
心のスタンスを整える一言
自分に:「結果は通過点。今日のゴールは3レーンを回すこと」。
チーム/ペアに:「勝ったのは個人じゃなく手順。次も手順を回そう」。
クリックできる参考文献
- スポーツにおける失敗恐怖と完璧主義の関係(総論):Sagar & Stoeber, 2009 PubMed / Journal
- 「脅威 vs 挑戦」評価とパフォーマンス(メタ分析):Hase et al., 2025 Open Access
- 帰属(Attribution)トレーニングで萎縮(choking)を軽減:Huang et al., 2025 PubMed / Open Access
- 失敗後の回復を助けるセルフ・コンパッション:Ceccarelli et al., 2019 Open Access
- 統制的指導が失敗恐怖を高める可能性:Hu et al., 2023 Open Access
- (参考)tDCSは先端技術:Joshi et al., 2025(大学アスリートのRCT) PubMed / 総説 ※本記事は道具不要の方法に限定、tDCSは参考情報のみ。
※本記事は一般情報です。強い苦痛や長引く不調があれば、指導者・医療専門職にご相談ください。
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