スポーツの緊張に呼吸法は効くの?

読者:
大事な試合の前になると、心臓がバクバクして力が出し切れません…。深呼吸って本当に効くんでしょうか?

ハタケ:
効きます。呼吸は体のブレーキ。吐く息を長めにすると、心拍や自律神経のバランスが落ち着き、注意が「今ここ」に戻りやすくなります。
結論(先に)
①「吐く長め」で落ち着く(例:4秒吸う→6〜8秒吐く)
②「短い手順」を用意する(数える・視線・次の一歩)
③「場面で使い分ける」(直前/プレー中/日々の練習)
なぜ効く?(1分で)
ゆっくりした呼吸は、心拍のゆらぎ(HRV)を整え、緊張=警報モードから集中モードへ戻しやすくします。実際、アーチェリーの実験では、深くゆっくりした呼吸が心理的安定と集中をサポートした報告があります1。また、呼吸トレーニングやヨガ由来のエクササイズは、不安の軽減や睡眠の質向上にもつながると示されています2。スポーツでは、落ち着いた体=安定した操作に直結します。
場面別レシピ|「いつ、どうやる?」が分かれば続く
① 本番直前60〜90秒:静かなギアチェンジ
- 姿勢:足裏を床に置き、鎖骨を軽く広げる(空気が入りやすい形)。
- リズム:4秒吸う→6〜8秒吐く×5。吐くときは口をすぼめて長く。
- 視線:正面の一点を1秒だけ静止注視(迷いを減らす合図)。
- 一言キュー:心の中で「次の一歩」(例:サッカー=内切り、テニス=S+1はクロス)。
※数えるのが苦手なら、鼻で吸う→口をすぼめてゆっくり吐くの繰り返しでもOK。
② プレー中10秒:ミス後の立て直し
3秒:長く吐く(フー)→ 3秒:一点注視 → 4秒:「次の一歩」を心で宣言。
考え込むより、短く戻って次へ。スコアを守る最短ルートです。
③ 日々の練習5分:呼吸の“筋力”を育てる
- メトロノーム法:4秒吸う→6秒吐くで5分。週3〜5回。HRV(ゆらぎ)の回復感が出やすい。
- 夜のクールダウン:ベッドで3分だけ吐く長め。寝つきの質も整えやすい。
種類と使い分け|4-7-8は“場面選び”がコツ
4-7-8呼吸(4吸→7止→8吐)は鎮静が強いぶん、直前に気力も落ちやすい人には合わないことがあります。試合直前は、止めずに「吐く長め」(4→6〜8)がおすすめ。
※めまい・息苦しさが出る人は止めの長い方法を避け、医療的な心配がある場合は専門家に相談を。
よくあるNGと“その場で直す”
- NG:肩で吸う(肩が上がる)。→ 直す:鼻で静かに吸い、お腹と背中の間に空気が広がるイメージ。
- NG:吐くのが短い。→ 直す:口をすぼめて、ろうそくを揺らすくらいの細い息で長く。
- NG:数えに必死で逆に不安。→ 直す:秒数は捨てて、鼻吸い→口すぼめ吐きだけに集中。
シーン別ワンフレーズ(迷ったらコレ)
サッカー:「吐く→内切り」/テニス:「吐く→S+1はクロス」/陸上:「吐く→前傾・腕ふり」。
短く具体な合図は、頭の渋滞をほどきます。
ミニQ&A
Q. S+1(エス・プラス・ワン)って何ですか?
A. テニスで、サーブ(Serve)の直後、最初の一打(=+1球目)のことです。どこへサーブを入れて、次の一球をどこへ運ぶかという“二手セット”を指します。
例: デュース側=ワイドにサーブ → +1はフォアのクロス/センターにサーブ → +1は逆クロス。アド側=センターへ回転多め → +1はバックのダウン・ザ・ライン。
なぜ大事? 事前に型を決めておくと、緊張時の迷いが減り、打点とフットワークが安定します。
※リターン側にも同様の考え方があり「R+1(Return+1)」と呼ぶことがあります。
Q. どのくらいで効きますか?
A. 多くの人は30〜90秒で落ち着きの手応えが出ます。習慣化すると“戻り”が速くなります。
Q. 緊張が強すぎて苦しい時は?
A. まずは吐く一本。それでもつらい時は、水をひと口→顔を冷やす→安全な場所で数分休む。持病がある場合は無理をしないでください。
参考文献(クリック可)
- アーチェリー選手:ゆっくりした呼吸と集中/心理安定の関連(VR環境) PubMed
- 呼吸・ヨガ系エクササイズと不安・睡眠 PubMed
- HRVと自己調整(スポーツ心理の基礎レビュー) Laborde S, Front Psychol (2017)
※本記事は一般情報です。持病・体調に不安がある場合は、指導者や医療専門職にご相談ください。
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