禁煙・禁酒にどう活用できる?催眠療法の研究知見と実践ヒント
催眠は「眠らせる」「操る」ものではありません。意識は保たれたまま、言葉・注意・イメージを使って
望ましい行動を選びやすい状態に整える心理技法です。
研究では、認知行動療法(CBT)や自己記録、ニコチン代替療法(NRT)などと併用し、
渇望やストレス対処、自己効力感を支える可能性が示唆されています。

読者:禁煙しようとしても、イライラや渇望で結局吸ってしまいます…。催眠って本当に役立ちますか?

ハタケ:催眠は単独で万能というより、既存の禁煙・禁酒プログラムの“実行しやすさ”を後押しする位置づけが現実的です。たとえば、合図語(自己暗示)や呼吸を渇望の瞬間に使う練習を事前にしておきます。

クロ先生:複数の研究・レビューでは、行動療法やNRTと組み合わせたときに、渇望の波をやり過ごす・自己効力感を保つなどの面で有用だったとする報告があります。個人差が大きいので、短く覚えやすいやり方を一緒に設計するのがコツです。
研究から読み取れる3つのポイント
- ① 併用が基本:CBT/自己記録/NRT/生活リズム調整などと組み合わせて設計されることが多い。
- ② 渇望・ストレス時の“橋渡し”:合図語・イメージ・呼吸のセットで、最初の5〜10分をやり過ごす支えになる可能性。
- ③ 個人差への適合:効きやすいキュー(言葉・イメージ)は人により異なる。短い・肯定形・自分の言葉が鍵。
※効果の大きさは一律ではありません。一次情報はレビュー/RCTを参照(末尾の検索ヒント)。
催眠は「薬より強い魔法」ではありません
- 主体性が前提:意識を失わせたり、勝手に行動を変えるものではありません。
- 医学的評価の代替ではない:特に禁酒の急性離脱(けいれん・せん妄等)は生命に関わる危険があります。飲酒量が多い方は医療機関で計画的な離脱支援を。
- 包括的サポートと併用:睡眠・食事・運動・環境調整(買い置きの見直し)などの整備が土台になります。
実生活で試せるミニワーク(禁煙・禁酒共通)
- トリガー可視化:「いつ・どこで・誰と・どんな気分で」吸いたく/飲みたくなるかを1行メモ。
- 合図語 × 呼吸:吐く息に合わせて短語(例:「選べる」)。4-2-6呼吸を3サイクル。
- 5分の“波乗り”:タイマーで5分。歩く/ガム/水をひと口。波は数分で弱まることを体感する。
- 置き換えIf-Then:「もし渇望が来たら → その場で水を飲み外の空気を吸う」等を1文で事前決定。
※治療中・持病のある方は主治医の指示を優先してください。
適応と注意点
- 適応:渇望やイライラ時の対処を身につけたい/禁断症状への不安が強い/実行計画を続ける自信を高めたい。
- 注意:アルコール摂取量が多い・離脱既往がある・けいれん歴・妊娠中などは必ず医療機関へ。
- 推奨併用:CBT、NRT、サポートグループ、家族の協力、環境調整。
文献を探すには(検索ヒント)
PubMed等で次を組み合わせて検索:
("hypnosis" OR "hypnotherapy") AND ("smoking cessation" OR "tobacco" OR "alcohol cessation" OR "alcohol use disorder" OR "craving")
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