本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

試合終盤に緊張で萎縮してしまうあなたへ:スポーツ心理学が教える克服法

試合終盤、「あと少しで勝てそう」と思った瞬間に萎縮してしまいます…

読者アイコン 読者:
試合の終盤で「もう少しで勝てる!」と思うと、逆に緊張して体が動かなくなります…。どうすればいいんでしょうか?

ハタケアイコン ハタケ:
それはまさに「choking under pressure(プレッシャーによる萎縮)」と呼ばれる現象ですね。脳が「失敗してはいけない」と過剰に意識すると、普段できている動作がうまくできなくなるんです。

クロ先生アイコン クロ先生:
2024年のレビュー論文(de Bieら)では、音楽やスポーツにおける「プレッシャー下トレーニング(pressure training)」がこの状況の克服に有効だと紹介されています。意図的に緊張感のある状況を作って練習するんですね。

ハタケアイコン ハタケ:
他にも、チームスポーツでは「勝敗の責任をみんなで分かち合うこと(outcome interdependence)」が、個人のプレッシャーを和らげると示されています(Wolfら, 2024)。

クロ先生アイコン クロ先生:
また、観客の存在も影響します。Zhengら(2025)のサッカー研究では、観客の注視によって成功率が下がることも。視線が気になるときは「ルーティンを作る」ことも有効です。

実生活で使える!緊張に強くなる3つのコツ

  • 1. あえて緊張する練習をする:観客の前での模擬試合などで「緊張慣れ」する。
  • 2. 「結果」より「動き」に集中する:成功・失敗ではなく、呼吸や動作に意識を向ける。
  • 3. 自分のミスも「チームの一部」と捉える:責任を分散する思考法を身につける。

【追加のご質問】団体戦でも「責任が全部自分に…」と感じてしまいます

読者アイコン 読者:
テニスの団体戦などでは、最後の試合が自分にかかっていて「自分が負けたら終わり」と強く思ってしまいます。責任を分散させるには、どのような考え方がありますか?

ハタケアイコン ハタケ:
勝敗が自分にかかる場面はプレッシャーが大きいですよね。でも冷静に考えると、そこに至るまでには他のメンバーの勝ち負けも影響しています。結果は「チーム全体の流れ」で生まれているんです。

クロ先生アイコン クロ先生:
Wolfら(2024)の研究によると、「みんなで勝敗を背負う」という意識をチーム内で共有することで、プレッシャーはやわらぐんです。試合前に「どんな結果でも受け入れる」と伝え合うのもおすすめですよ。

責任を自分一人で抱え込まないための考え方

  • 「チームの結果の一部を担っている」という認識を持つ
  • 「勝ち負けはプロセスの結果」と割り切る
  • 「信頼されてるから託された」と前向きに受け止める

【別の視点】「完全に個人戦」として捉える考え方も有効

読者アイコン 読者:
逆に「完全に個人戦」と思い込んでしまった方が気が楽になったりもします。そういう考え方ってアリですか?

ハタケアイコン ハタケ:
もちろんアリです!「すべて自分次第だ」と思うことで、逆に集中力が高まる人もいます。これは「自己効力感(self-efficacy)」が高いタイプの人にとっては、非常に有効な戦略なんです。

クロ先生アイコン クロ先生:
重要なのは「どちらの考え方が自分に合っているか」。責任を「分散して安心する」もよし、「引き受けて燃える」もよし。いずれにせよ、自分が納得できる「意味づけ」を持つことが、メンタルの安定につながりますよ。

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投稿者プロフィール

畠山 博行
畠山 博行精神科医/マインドルート代表医師
2020年 東海大学医学部卒業。総合病院、離島医療、児童精神科などでの診療を経て、現在は急性期医療から在宅医療まで幅広い臨床現場に携わりながら、子どもから大人までのメンタルケアにも従事。

試験前やスポーツ前の緊張、不安定な集中力、やる気の波などに対し、スポーツメンタルトレーニングの視点を取り入れた自律訓練法や認知的アプローチを活用。オンラインで気軽に受けられるメンタル支援サービス「マインドルート」を運営。

「禁煙したいけどやめられない」「本番に強くなりたい」「緊張を力に変えたい」といった悩みに寄り添い、心と行動を整えるサポートを行っている。

また、「子育てがきつい・しんどい」と感じる方の悩みにも、自身の育児経験をもとに等身大の視点で発信。PubMedなどの論文を通じた確かなエビデンスに基づき、信頼できる情報をわかりやすくコラム形式で届けている。

所属学会:日本精神神経学会、日本神経精神薬理学会、かながわ地域精神科医会

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