緊張で身体が固くなるのはなぜ?脳科学とスポーツ心理学の視点から

読者:プレゼンや試合の前になると、身体がガチガチに固まってしまいます。これってどうしてなんでしょう?

ハタケ:それは「パフォーマンス不安」によるものですね。緊張すると、脳の視床下部が交感神経を活性化させ、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌されます。これにより筋肉が収縮し、身体が固くなるのです。

クロ先生:スポーツ心理学では、このような身体の反応を「ソマティック不安」と呼びます。筋肉の緊張や震え、呼吸の浅さなどが含まれ、パフォーマンスに影響を与えることがあります。
アスリートの体験談から学ぶ
多くのトップアスリートも、緊張や不安による身体の硬直を経験しています。例えば、テニスの大坂なおみ選手は、試合後の記者会見での不安から全仏オープンを棄権し、長年うつに苦しんできたことを告白しました。
参考文献:婦人画報
また、体操のシモーネ・バイルズ選手は、東京五輪でメンタルヘルスを理由に途中棄権し、「身体の健康は心の健康なのです」と発信しました。
参考文献:婦人画報
筋緊張とパフォーマンスの関係
研究によると、緊張による筋肉の過度な収縮は、動作の正確性やスピードを低下させることが示されています。たとえば、ゴルフのパッティングでは、プレッシャーがかかると筋活動が増加し、パフォーマンスが低下することが報告されています。
参考文献:PubMed ID: 20409012
リラックス法の効果
筋弛緩法(PMR:Progressive Muscle Relaxation)は、筋肉の緊張を和らげ、パフォーマンス不安を軽減する効果があります。PMRを実施することで、運動イメージの能力が向上し、緊張状態でもより良いパフォーマンスが期待できます。
参考文献:PubMed ID: 39792894
実生活で使える3つのTips
- 呼吸法の実践:深くゆっくりとした呼吸を意識することで、交感神経の興奮を抑え、リラックス状態を促進します。
- 筋弛緩法(PMR)の活用:特定の筋肉群を意識的に緊張させた後、ゆっくりと弛緩させることで、全身のリラックスを図ります。
- ポジティブな自己対話:「できる」「大丈夫」といった前向きな言葉を自分にかけることで、不安感を軽減し、自信を高めます。
マインドルートでは読者の方からのご質問に対し、コラムを用いて専門的な見解を積極的にご回答します。
投稿者プロフィール

- 精神科医/マインドルート代表医師
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2020年 東海大学医学部卒業。総合病院、離島医療、児童精神科などでの診療を経て、現在は急性期医療から在宅医療まで幅広い臨床現場に携わりながら、子どもから大人までのメンタルケアにも従事。
試験前やスポーツ前の緊張、不安定な集中力、やる気の波などに対し、スポーツメンタルトレーニングの視点を取り入れた自律訓練法や認知的アプローチを活用。オンラインで気軽に受けられるメンタル支援サービス「マインドルート」を運営。
「禁煙したいけどやめられない」「本番に強くなりたい」「緊張を力に変えたい」といった悩みに寄り添い、心と行動を整えるサポートを行っている。
また、「子育てがきつい・しんどい」と感じる方の悩みにも、自身の育児経験をもとに等身大の視点で発信。PubMedなどの論文を通じた確かなエビデンスに基づき、信頼できる情報をわかりやすくコラム形式で届けている。
所属学会:日本精神神経学会、日本神経精神薬理学会、かながわ地域精神科医会
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