本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

怪我からの復帰とメンタルトレーニング【医師監修】

怪我からの復帰とメンタルトレーニング:再発不安やトラウマに向き合うには?

スポーツで怪我を経験した選手の多くが、復帰の瞬間に「怖さ」や「不安」を感じます。
今回は、そんな悩みを抱える選手に向けて、精神科医のハタケと心理士クロ先生がメンタルトレーニングの視点からアドバイスします。

読者アイコン 読者:怪我からようやく復帰できることになりました。でも、正直言ってまた怪我するんじゃないかって怖くて…。プレーに自信が持てません。
ハタケ ハタケ:それはごく自然な反応ですよ。怪我の経験は「心理的トラウマ」として記憶に残り、再発への恐怖を生みます。
実際に、Rodriguezら(2019)の研究では、前十字靭帯損傷後の選手にイメージトレーニングを導入することで、「再発の不安」や「痛みへの恐怖」が軽減されたと報告されています。
クロ先生 クロ先生:つまり、体の回復だけでなく、「心のリハビリ」も必要なんです。特に再発への不安は、脳が「危険な記憶」を引きずっている状態なんですよね。
読者アイコン 読者:たしかに、怪我をした瞬間のことが何度も頭に浮かびます…。それだけで体がこわばってしまって…。
ハタケ ハタケ:そういうときには「モーターイメージトレーニング」が効果的です。
最近の研究(McNeilら, 2025)では、頭の中で動きをイメージするだけでも、脳は実際の運動に近い反応を示すことが分かってきました。
イメージでプレーを「成功させる」経験を繰り返すことで、脳が「怖くない」と認識していくんです。

怪我からの復帰に役立つ3つのメンタルトレーニング

  • ① リハビリと同時進行で「動きのイメージ」を習慣化:
    ベッドやイスに座った状態で、プレーの動きを目を閉じて思い浮かべる。自信のあるプレー、成功したシーンを反復すると効果的。
  • ②「再発したらどうしよう?」の代わりに「どう対処するか?」を考える:
    不安はゼロにするよりも、「起きても大丈夫」と思える方が現実的。プランを立てておくと安心感につながる。
  • ③ 気持ちを記録する「リハビリ日記」:
    怖かった日、うまくいった日を記録していくことで、自分の進歩が見えてきます。不安に飲まれそうなときも、自信の材料になりますよ。
クロ先生 クロ先生:「心の準備」ができているかどうかで、プレー中の反応は大きく変わります。うまく切り替えるスキルも練習の一部だと思って取り組んでくださいね。
ハタケ ハタケ:怪我の回復と同じように、心の不安にも「プロセス」があります。焦らず、一歩ずつ「信じられる自分」を取り戻していきましょう。

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投稿者プロフィール

畠山 博行
畠山 博行精神科医/マインドルート代表医師
2020年 東海大学医学部卒業。総合病院、離島医療、児童精神科などでの診療を経て、現在は急性期医療から在宅医療まで幅広い臨床現場に携わりながら、子どもから大人までのメンタルケアにも従事。

試験前やスポーツ前の緊張、不安定な集中力、やる気の波などに対し、スポーツメンタルトレーニングの視点を取り入れた自律訓練法や認知的アプローチを活用。オンラインで気軽に受けられるメンタル支援サービス「マインドルート」を運営。

「禁煙したいけどやめられない」「本番に強くなりたい」「緊張を力に変えたい」といった悩みに寄り添い、心と行動を整えるサポートを行っている。

また、「子育てがきつい・しんどい」と感じる方の悩みにも、自身の育児経験をもとに等身大の視点で発信。PubMedなどの論文を通じた確かなエビデンスに基づき、信頼できる情報をわかりやすくコラム形式で届けている。

所属学会:日本精神神経学会、日本神経精神薬理学会、かながわ地域精神科医会

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