本ページは、精神科医・畠山博行(マインドルート代表医師)の監修のもとで執筆されています。

試合中のミスを引きずらない方法|精神科医監修の5つの対処法

試合中にミスをした時に引きずらない方法

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サッカーの試合でパスミスをしてしまった時、その後のプレーでも頭から離れず、焦ってしまってまたミス…。悪循環になることが多く、どうすればもっと早く切り替えられるのか悩んでいます。

ハタケ ハタケ:

試合中のミスに引きずられてしまうのは、脳の“危険察知”システムが働いている証拠とも言えます。つまり、「またミスしたらどうしよう」という不安が強まり、交感神経(いわゆる“戦う・逃げる”モード)が優位になって、冷静な判断がしにくくなる状態ですね。

2022年に発表された研究(Fu et al., 2022)でも、IoT技術を使ったアスリートのメンタル状態のリアルタイム評価と、試合中のメンタル回復のサポートの重要性が指摘されています。

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ところで…その「IoT技術」って、具体的にどういうものなんですか?

ハタケ ハタケ:

失礼しました。IoT(アイオーティー)とは「Internet of Things」の略で、モノのインターネットと呼ばれるものです。例えば、Apple Watchのようなスマートウォッチで心拍数やストレスレベルを測定したり、スポーツ用のウェアラブルセンサーで選手の体の動きをリアルタイムに把握したりする仕組みです。

緊張していると心拍が上がりますが、それを検知して「今、深呼吸を入れよう」と通知が来るなど、メンタル面の自己調整にも使えます。Apple Watchなどのデバイスは、アスリートの“セルフコントロール”を助けるパートナーになってくれますよ。

クロ先生 クロ先生:

なるほど、IoTなどのサポート技術が発達しても、結局は「自分の気持ちをどう扱うか」がカギになるんですよね。私がサポートしていた高校バレーのエース選手も、まさにその切り替えに苦しんでいました。

彼はサーブミスをすると、決まって下を向いてしまい、コート上で孤立するような空気になっていました。でも、それは“落ち込んでいる”というより、「どう振る舞えばいいか分からない」状態だったんですね。なので私たちは、ミス直後に“あえて動く”ことをルール化しました。

たとえば「すぐにチームメイトとハイタッチする」「視線を観客席に一瞬だけ移す」「背筋を伸ばして笑顔を作る」など、ほんの数秒の行動が、心のモードをリセットするスイッチになるんです。本人も「ミスが怖くなくなった」と言っていましたよ。

大切なのは、「落ち込むな」ではなく「立ち直る型を決めておく」こと。感情に飲まれる前に行動を挟む、それが“心の技術”なんです。

実生活で使える5つのTIPS(具体例つき)

  • ① 5秒ルールで意識を切り替える:
    ミスをした直後、「5秒だけは反省してOK」と自分に許可を与える。たとえばラグビー選手の間では、「5秒ルール」と言って、ミスした直後に5秒で気持ちを切り替える練習が浸透しています。
  • ② セルフトークで自分をコーチする:
    たとえば「今のはチャレンジだった」「自分なら取り返せる」など、あらかじめ決めた言葉で自分に声をかけましょう。ある女子バスケ選手は「OK、次いこう!」を口ぐせにしています。
  • ③ ミス後の“儀式”を作る:
    ハイタッチ、胸に手を当てて深呼吸、軽くジャンプするなど、小さな動作を決めておくと、気持ちがリセットされやすいです。プロテニス選手が毎ポイントごとにタオルで顔をふくのもこの一環です。
  • ④ ポジティブなボディランゲージをキープする:
    たとえばうつむく代わりに背筋を伸ばす、周囲を見渡すなど、姿勢を意識的に変えるだけで脳の感情系が落ち着きます。表情や姿勢のフィードバック効果は科学的にも認められています。
  • ⑤ 試合後の「振り返りノート」を活用する:
    試合中は分析を後回しにしてOK。「今は行動に集中、分析はあとで」と決めておくことで、プレーへの没頭力が上がります。試合後に振り返りを書くことで次への成長にもつながります。

まとめ:ミスは“情報”として活用する時代へ

現代のスポーツメンタルでは、「ミス=悪」ではなく「ミス=フィードバック」と捉える考え方が主流になっています。大切なのは、“ミスにどう反応するか”を練習しておくこと。

つまり、メンタルの強さとは「ミスをしない心」ではなく、「ミスしても立て直せる心」なんです。そのためにも、自分に合った“切り替えルーティン”を日頃から取り入れてみてくださいね。

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投稿者プロフィール

畠山 博行
畠山 博行精神科医/マインドルート代表医師
2020年 東海大学医学部卒業。総合病院、離島医療、児童精神科などでの診療を経て、現在は急性期医療から在宅医療まで幅広い臨床現場に携わりながら、子どもから大人までのメンタルケアにも従事。

試験前やスポーツ前の緊張、不安定な集中力、やる気の波などに対し、スポーツメンタルトレーニングの視点を取り入れた自律訓練法や認知的アプローチを活用。オンラインで気軽に受けられるメンタル支援サービス「マインドルート」を運営。

「禁煙したいけどやめられない」「本番に強くなりたい」「緊張を力に変えたい」といった悩みに寄り添い、心と行動を整えるサポートを行っている。

また、「子育てがきつい・しんどい」と感じる方の悩みにも、自身の育児経験をもとに等身大の視点で発信。PubMedなどの論文を通じた確かなエビデンスに基づき、信頼できる情報をわかりやすくコラム形式で届けている。

所属学会:日本精神神経学会、日本神経精神薬理学会、かながわ地域精神科医会

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